株の配当金や株式投資信託の利益の分配金は、受け取るときにすでに税金が源泉徴収されているので、確定申告する義務はないのですが、課税所得が695万円以下の方は、総合課税で確定申告をして配当控除を受けた方が得です。(※住民税の申告不要を選択すると課税所得900万円以下まで総合課税の方が得です。)
そこで今回は、「課税所得」の計算方法と、配当控除で節税したい方を対象とした確定申告書類の書き方と記入例を詳しくご紹介させていただきます。
※当記事は課税所得が695万円以下の方を対象に書かせていただいております。(詳しくは本文にてご説明させていただきます。)
また、去年の株取引で損失が出てしまい、「配当金との損益通算」と「損失の繰越(繰越控除)」をする人はこちらの記事をご参照ください。
【当記事の記入例設定】
会社員の佐藤さん(52歳)は、給与収入のほかに株の配当金を受け取りました。会社で年末調整はしましたが、友人から「配当控除で税金の還付が受けられる。」と聞き、確定申告を行います。
給与年収:580万円
配当金:2社で71,000円(上場株式)
(配当金内の訳)
①A株式会社 31,000円
内)源泉徴収 所得税:4,747円 住民税:1,550円
②B株式会社 40,000円
内)源泉徴収 所得税:6,126円 住民税:2,000円
(家族構成)
妻(パート収入103万以内)
長男(17歳)
はじめに:配当控除で得するのはどんな人?課税所得とは?
冒頭に書いた通り、課税所得が695万円以下の方であれば、総合課税で確定申告した方が得なので、まずは課税所得を確認してみましょう。ここでは給与所得のみの方を対象に、簡単に課税所得を算出する方法をご紹介します。
給与所得のみの方の課税所得は会社から受け取った源泉徴収票を見ればだいたいの見当がつきます。良かったらご自身の源泉徴収票を見ながら、ご一緒に課税される所得金額を計算してみてください。
【源泉徴収票サンプル】
まず、上記源泉徴収票サンプルの赤枠から青枠を引きます。
4,200,000円-1,971,223円=2,228,777円
次に、上記で計算した2,228,777円に去年受け取った配当金を足します。(※源泉徴収税額が引かれる前の金額です。)今回は配当金71,000円を受けたったと仮定し計算を行います。
2,228,777円+71,000円=2,299,777円
この2,299,777円の千円未満を切り捨てた2,299,000円が課税所得です。
この金額が695万円以下であれば確定申告した方が得なので、今からご紹介する書き方・記入例を参考に確定申告しましょう。
事前に準備するもの
次の書類をお手元にご準備ください。
- 確定申告書
- 会社から受け取った源泉徴収票
- 配当金計算書(または配当金通知書)
確定申告書はこちらからダウンロードできますので、よかったらご利用ください。ただし、複写ではないので提出前にコピーをとる必要があります。
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※昨年(令和4年分)から申告書Aが廃止され、申告書Bに一本化されました。名称も「申告書」とシンプルになりました。
確定申告書 第二表の書き方・記入例
はじめに第二表から書いていきます。まずは源泉徴収票から青①②を第二表の該当部分に書き写してください。
(源泉徴収票)
【第二表 記入例】
赤① 住所・氏名・フリガナを記入します。
赤② 源泉徴収票から書き写した行の「所得の種類」を「給与」、種目を「給料」、その右隣に「勤務先の会社名」を記入します。
続いて配当所得を記入します。「所得の種類」を「配当」、種目を「株式の配当」、その右となりに「配当を受け取った会社名」、「配当収入」、「源泉徴収税額」を記入します。
源泉徴収税額は、「配当金計算書(通知書)」に記載されていると思いますが、上場株式の場合は「配当収入」の15.315%、非上場株式の場合20.42%です。
今回の記入例は上場株式の配当金なので、
A株式会社
31,000円×15.315%
=31,000円×0.15315
=4,747円 ※1円以下は切り捨て
B株式会社
40,000円×15.315%
=40,000円×0.15315
=6,126円
となります。
赤③ 源泉徴収税額の合計額を記入します。今回の記入例では、127,931円+4,747円+6,126円=138,804円
赤④ 上場株式等の配当や分配金は所得税・住民税それぞれで申告する・しないを選択できます。今回、所得税では申告しますが、住民税で申告不要を選択する場合は○を付けます。
赤⑤ 給与以外の所得に係る住民税を給与から会社の給与から天引きする場合は「特別徴収」に○を、自分で納付する場合は「自分で納付」に○を付けます。
確定申告書 第一表の書き方・記入例
続いて第一表を書いていきましょう。先程と同じく、まずは源泉徴収票から青①②③を書き写して下さい。
【源泉徴収票】
【確定申告書第一表 記入例】
源泉徴収票から書き写したら、次に上記記入例赤枠内を書いていきます。
赤① 住所・氏名・フリガナ・マイナンバー・性別・世帯主の氏名・世帯主との続柄・生年月日・電話番号を記入します。※去年の1月1日時点の住所が現住所と異なる場合は、去年の1月1日時点も記入します。
生年月日の1つ目の枠(記入例で「3」と記載している部分)は次のとおり記入してください。
明治→1
大正→2
昭和→3
平成→4
赤② 配当金の収入金額を記入します。※源泉徴収税額が引かれる前の金額です。
赤③ 配当所得(「赤②配当収入」から「借入金の利子などの必要経費」を引いた金額)を記入します。※必要経費がない場合は、赤②をそのまま記入してください。
赤④ 所得の合計金額を記入します。
【記入例】
給与所得:4,200,000円
配当所得:71,000円
合計:4,271,000円
赤⑤ 青③をそのまま転記します。
※当記事の記入例にはありませんが、雑損控除・医療費控除・寄付金控除に該当する方は、それぞれの控除額を計算し記入してください。
医療費控除・ふるさと納税についてはこちらの記事に詳しく書かせていただきましたので、該当する方は良かったらご参照下さい。
【参考記事】
■医療費控除:確定申告書の書き方と記入例(第一第二表・医療費の明細書)
■確定申告:ふるさと納税(寄付金控除)の書き方を記入例付で徹底解説
赤⑥ 続いて、課税される所得金額を計算します。④から⑤を引いた金額を記入します。※1000円未満は切り捨て
赤⑦ ⑥課税所得を下記税率表に当てはめて所得税額を計算します。
【計算式】
「所得税額」=「課税される所得金額」×「税率」-「控除額」
(記入例)
「課税される所得金額(⑥)」は2,299,000円なので、上記票の上から二番目に該当します。
「所 得税額」=2,299,000円×10%(0.1)-97,500円
=132,400円
赤⑧ 配当控除額を計算して記入します。課税所得1000万円以下の方の配当控除額は、配当所得の10%です。※課税所得とは赤⑥の金額です。
【記入例】
71,000円×10%
=7,100円
赤⑨ ⑦–⑧の金額を記入します。※住宅ローン控除等がある場合は、 ⑦–⑧の金額からさらに住宅ローン控除額等を引いた金額をこの欄に記入。
住宅ローン控除については、こちらの記事に詳しく書かせていただきましたので、該当する方は合わせてご参照ください。
第一回:確定申告:住宅借入金等特別控除額の計算明細書の書き方と記入例
第二回:住宅ローン控除(減税)初年度の確定申告書の書き方と記入例を徹底解説
赤⑩ ⑨をそのまま転記します。※災害減免額がある場合は⑨から引いた金額をこの欄に記入。
赤⑪ 復興特別所得税額を計算します。⑩に0.021をかけた金額を記入します。※1円未満の端数は切り捨て。
「記入例」
125,300円×0.021=2,631.3円
1円未満の端数は切り捨てで、2,631円
赤⑫ ⑩と⑪を足した金額を記入します。
「記入例」
125,300円+2,631円=127,931円
赤⑬ 源泉徴収税額の合計額を記入します。第二表③から転記してください。
赤⑭ ⑫–⑬の金額を記入します。マイナスの場合は金額の前に△をつけて下さい。
「記入例」
127,931円-138,804円=-10,873円
赤⑮ ⑭の金額を転記します。(△はもともとついているので付ける必要ありません。)この金額が還付される金額です!
「記入例」
プラスになったので、赤⑮に10,873円と記入。
10,873円が還付金として戻ってきます!
赤⑯ 還付金の振込み先口座を記入します。
添付書類の確認
【提出が必要な書類一覧】
- 確定申告書(第一表・第二表)
- 配当などの支払通知書
- マイナンバー通知カードのコピー、またはマイナンバーカードのコピー
- 運転免許証などの本人確認書類のコピー
※マイナンバーカードのコピーを添付する場合は必要ありません。
ここでご紹介しているのは、当記事の記入例設定で必要な添付書類となります。状況が異なる場合は、次章でご紹介する「税務署の電話相談センター」にて添付書類のご確認をお願いいたします。
おわりに
書き方がわからないときの対処法
人それぞれ状況が違うので、当記事の記入例だけではわからない部分も出てくるかと思います。その場合は、税務署の電話相談センターで聞くのが一番早いです。
確定申告の書き方でお困りの方は、ケース別に確定申告記入例をまとめた、こちらの記事も是非参考にしてみてください。
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■2024(令和5年分)確定申告書類の書き方・記入例ケース別徹底解説!
それでは今日も最後までお読みいただきありがとうございました。