この記事では、生命保険などの満期保険金や、途中解約による解約返戻金を受取った方を対象に、「課税される一時所得」の計算方法と、確定申告書の書き方と記入例をご紹介させていただきます。
満期保険金や解約返戻金は、一時所得に該当するのですが、一時所得は税制上とても優遇されているので税金がかからない可能性も十分あります。
まずは「課税される一時所得の金額」を計算し、申告する必要があるかどうかを確認します。そして申告が必要な場合は、当記事の書き方・記入例を参考に確定申告して下さい。
※当記事では、「保険料負担者=受取人」を想定して書いております。「保険料負担者=受取人」でない場合は、贈与税に当たる可能性があるので、保険会社様にご確認ください。
※また、満期保険金を年金形式で受取ってる場合は、一時所得ではなく雑所得扱いとなるため計算方法が異なります。
目次
受け取った保険金に税金がかかるか確認
冒頭にも書いたように 満期保険金・解約返戻金(一時所得)は税制上とても優遇されているので 、まずは自分の受け取った 満期保険金・解約返戻金 に対して税金がかかるかどうかを確認しましょう。
保険会社から送られてきている「支払い明細書」をお手元にご用意ください。次の計算式で「課税される一時所得」を計算します。
【課税される一時所得の計算式】
課税される一時所得=(満期保険金-総払込金額-50万円)×1/2
※解約返戻金の場合は、満期保険金のところに解約返戻金を当てはめてください。
※総払込金額は、加入している生命保険に支払ったすべての金額で、保険会社から送られてきた支払明細書などに記載されています。
一時所得は、特別控除として一律50万円を引くことができ、さらにそれを1/2にした金額に対し税金がかかります。「課税される一時所得」を計算し、0円以下になった場合は、税金はかからないので申告する必要はありません。
(例1)総払込金額400万円で満期保険金600万円の養老保険の場合
課税される一時所得
=(600万円-400万円-50万円)×1/2
=75万円
満期保険金600万円の課税される一時所得は75万円。
(例2)総払込金額150万円で解約返戻金180万円の場合
課税される一時所得
=(180万円-150万円-50万円)×1/2
=0円以下なので0円。
解約返戻金180万円に課税される一時所得は0円以下のため税金はかかりません。よって、確定申告は必要ありません。
確定申告書の書き方・記入例
では、確定申告書の書き方と記入例を確認していきましょう。申告する必要のある方は、是非参考にしてみてください。
【設定】
会社員の佐藤さんは、25年間加入してきた生命保険(払込金額400万円)が満期になり、600万円を一時金で受取りました。会社で年末調整はしましたが、満期保険金600万円の確定申告が必要です。会社から渡された源泉徴収票と、保険会社から送られてきた支払い明細書を元に確定申告を行います。
(家族構成)
妻(パート収入103万以内)
長男(17歳)
事前に準備するもの
次の書類をお手元にご準備ください。
- 確定申告書
- 源泉徴収票
- 保険金の支払調書
こちらからダウンロードできるのでよかったらご使用ください。ただし、複写ではないので提出前にコピーをとる必要があります。
→確定申告書
※去年(令和4年分)から申告書Aが廃止され、申告書Bに一本化されました。名称も「申告書」とシンプルになりました。
確定申告書 第二表の書き方・記入例
第二表から書いていきますので、第二表と源泉徴収票をご用意ください。まずは源泉徴収票から青①②を書き写します。
(源泉徴収票)
【確定申告書第二表 記入例】
源泉徴収票から書き写したら、赤枠内を記入していきます。
赤① 住所・氏名・フリガナを記入します。
赤② 「所得の種類」を「給与」、種目を「給料」、その右隣に「勤務先の会社名」を記入します。
赤③ 保険会社から送られてきた支払調書を参考に、「収入金額」に「受け取った保険金額」を、「支出金額」に「払込保険料」を、「差引金額」にその差額を記入してください。
赤④ 保険金に対する住民税を自分で納付する場合は「自分で納付」に○を付けます。給与からの手引きを希望する場合は、「特別徴収」に〇を付けてください。
確定申告書 第一表の書き方・記入例
続いて第一表を書いていきましょう。先程と同じく、まずは源泉徴収票から青①②②④を書き写して下さい。
(源泉徴収票)
【確定申告書第一表 記入例】
赤① 住所・氏名・フリガナ・マイナンバー・性別・世帯主の氏名・世帯主との続柄・生年月日・電話番号を記入します。※去年の1月1日時点の住所が現住所と異なる場合は、去年の1月1日時点も記入します。
生年月日の1つ目の枠(記入例で「3」と記載している部分)は次のとおり記入してください。
明治→1
大正→2
昭和→3
平成→4
赤② 満期保険金・解約返戻金の収入金額を記入します。第二表③の差引金額から特別控除額50万円を引いた金額がここで記入する収入金額です。
(記入例)
一時所得の収入金額
=受取った保険金-払込金額-50万
=600万-400万-50万
=150万円
赤③ 課税される一時所得の金額を記入します。「課税される一時所得」は先程記入した「一時所得の収入金額」を1/2にした金額です。
赤④ 所得の合計金額を記入します。
赤⑤ 青③をそのまま転記します。
※当記事の記入例にはありませんが、雑損控除・医療費控除・寄付金控除に該当する方は、それぞれの控除額を計算し記入してください。
医療費控除・ふるさと納税についてはこちらの記事に詳しく書かせていただきましたので、該当する方は良かったらご参照下さい。
【参考記事】
■医療費控除:確定申告書の書き方と記入例(第一第二表・医療費の明細書)
■確定申告:ふるさと納税(寄付金控除)の書き方を記入例付で徹底解説
赤⑥ 続いて、課税される所得金額を計算します。④から⑤を引いた金額を記入します。※1000円未満は切り捨て
赤⑦ ⑥課税所得を下記税率表に当てはめて所得税額を計算します。
【計算式】
「所得税額」=「課税される所得金額」×「税率」-「控除額」
(記入例)
「課税される所得金額(⑥)」は2,978,000円なので、上記票の上から二番目に該当します。
「所 得税額」=2,978,000円×10%(0.1)-97,500円
=200,300円
赤⑧ ⑦をそのまま転記します。※住宅ローン控除などがある場合は、 ⑦ から引いた金額をこの欄に記入。
住宅ローン控除については、こちらの記事に詳しく書かせていただきましたので、該当する方は合わせてご参照ください。
第一回:確定申告:住宅借入金等特別控除額の計算明細書の書き方と記入例
第二回:住宅ローン控除(減税)初年度の確定申告書の書き方と記入例を徹底解説
赤⑨ ⑧をそのまま転記します。※災害減免額がある場合は⑧から引いた金額をこの欄に記入。
赤⑩ 復興特別所得税額を計算します。⑨に0.021をかけた金額を記入します。※1円未満の端数は切り捨て。
「記入例」
200,300円×0.021=4,206.3円
1円未満の端数は切り捨てで、4,206円
赤⑪ ⑨と⑩を足した金額を記入します。
「記入例」
200,300円+4,206=204,506円
赤⑫ 赤⑪から青④を引いた金額を記入しましょう。この金額が、追加で収める税額になります(100円未満は切り捨て)。
「記入例」
204,506円-170,300=34,206円
100円未満切捨てで、34,200円
赤⑬ 赤⑫を転記します。
添付書類の確認
【提出が必要な書類一覧】
- 確定申告書(第一表・第二表)
- 保険金の支払調書
- マイナンバー通知カードのコピー、またはマイナンバーカードのコピー
- 運転免許証などの本人確認書類のコピー
※マイナンバーカードのコピーを添付する場合は必要ありません。
ここでご紹介しているのは、当記事の記入例設定で必要な添付書類となります。状況が異なる場合は、次章でご紹介する「税務署の電話相談センター」にて添付書類のご確認をお願いいたします。
おわりに
書き方がわからないときの対処法
人それぞれ状況が違うので、当記事の記入例だけではわからない部分も出てくるかと思います。その場合は、税務署の電話相談センターで聞くのが一番早いです。
確定申告の書き方でお困りの方は、ケース別に確定申告記入例をまとめた、こちらの記事も是非参考にしてみてください。
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■2024(令和5年分)確定申告書類の書き方・記入例ケース別徹底解説!
それでは今日も最後までお読みいただきありがとうございました。