再就職手当を「申請⇒受給した人」で、前職より給料が低くなってしまった場合、雇用保険からその分を補ってもらえる「就業促進定着手当」という制度があります。
大変ありがたい制度ですが、計算が複雑で「結局、いくらもえるの?」と、よくわからない人も多いと思います。
そこで今回は「就業促進定着手当の計算方法」をまとめてみましたので、良かったら参考にしてみてください。
就業促進定着手当の自動計算ツールを作成しました!当記事の解説を一読後、自動計算ツールを使うとスムーズに自分の受給できる就業促進定着手当額がわかるので、当記事と合わせて是非ご活用ください。
■就業促進定着手当の自動計算ツール
目次
就業促進定着手当の支給条件を確認
支給条件は次の3つです。
- 再就職手当を受給された人
- 再就職先で6ヶ月以上勤務していること
- 再就職先の6ヶ月間の賃金1日分が、前職の賃金日額より低いこと
就業促進定着手当の支給額の計算方法
では、早速、計算式から確認していきましょう。
これが「就業促進定着手当」支給額の計算式になります。
「何か、難しくてわからないよ~」という方や「結局いくらもらえるの?」という方のために、一つ一つ確認していきましょう。
まずは、計算式の中の項目から確認していきます。
「離職前の賃金日額」の求め方
離職前の賃金日額は、雇用保険受給資格者証の「14.離職時賃金日額」で確認することができます。
但し、離職前の賃金日額には年齢によって上限額と下限額が設定されていますので、「離職前の賃金日額」が上限を超えた場合や下限を下回った場合はその額を計算式に当てはめて計算します。
<上限額>
離職時の年齢が29歳以下 | 13,670円 |
---|---|
離職時の年齢が30歳~44歳の方 | 15,190円 |
離職時の年齢が45歳~59歳の方 | 16,710円 |
離職時の年齢が60歳~64歳の方 | 15,950円 |
<下限額>
全年齢共通 | 2,657円 |
---|
(※令和4年8月1日~令和5年7月31日までの金額です。)
画像の「離職前の賃金日額」は10,000円ですね。上限・下限の範囲内なので、そのまま「10,000円」を計算式に当てはめて計算します。
計算式を使って求める場合は以下の通りです。
賃金日額=過去6ヶ月分の賃金の総額÷180
「再就職後6ヶ月間の賃金日額」の求め方
「再就職後6ヶ月間の賃金日額」の計算方法は月給と日給(または時給)で計算式が異なります。
<月給でもらっている方>
再就職後6ヶ月間の賃金の合計額÷180
<日給・時給でもらっている方>
下記の①②のどちらか金額の高い方です。
①再就職後6ヶ月間の賃金の合計額÷180
②(再就職後6ヶ月間の賃金の合計額÷労働日数)×70%
賃金の合計とは?
税金や雇用保険料などが控除される前の総支給額です。また賃金には通勤手当などの手当も含まれます。
赤で囲っている部分です。
「再就職後6か月間の賃金の支払基礎日数」の求め方
こちらも月給と日給(または時給)によって異なります。
月給制の場合 | 暦日数 |
---|---|
日給制・時給制の場合 | 労働の日数 |
暦日数と労働日数の違いは?
例えば、8月の場合
暦日数:31日(土、日、祝日を含めたカレンダーの日数です。)
労働日数:8月1日~31日までの中で働いた日数です。
計算例を使って確認
ここでは、例を用意したので計算式に当てはめて確認していきましょう。
例:Aさんの場合
離職時の年齢:32歳
離職前の給料:30万円(月給制)
再就職手当:受給
再就職手当の給付率:70%未満
支給残日数:60日
再就職日:4月1日
再就職先の給料:25万円(月給制)
<離職前の賃金日額>
給料が30万円の場合の離職前の賃金日額は、雇用保険受給資格者証の「14.離職時賃金日額」または、(300,000円×6ヶ月÷180=10,000円)10,000円となります。
<再就職後6ヶ月間の賃金日額>
新しい職場の月給が25万円の場合は(250,000×6ヶ月÷180=8,333円)8,333円となります。
<再就職後6か月間の賃金の支払基礎日数>
再就職後6か月間の賃金の支払基礎となった日数は4/1~9/30まで183日となります。
これを先ほどの計算式に当てはめると、
(10,000円-8,333円)×183日=305,061円
よって、Aさんは「就業促進定着手当」を約30万円もらえる計算になります。
但し、この計算式で出た金額がもらえる訳ではありません!それは「就業促進定着手当」には上限金額が設定されているからです。
上限額の計算方法は?
上限額を算出する計算式は↓です。
上限金額=基本手当日額×支給残日数 × 40%または30%(※)
(※再就職手当の給付率が70%の場合は「30%」で計算します。)
まず、下記の2つを調べます。
①前職の基本手当日額
前職の基本手当日額は「雇用保険受給資格者証」に記載されています。
基本手当日額にも上限が設定されていますので、下記の上限(または下限)を超えている場合は、上限額(または下限額)を計算式に当てはめます。
<就業促進手当を計算するときの基本手当日額の上限>
<就業促進手当を計算するときの基本手当日額の上限>
年齢が59歳以下の方 | 6,190円 |
---|---|
年齢が60歳~64歳の人 | 5,004円 |
(※令和4年8月1日~令和5年7月31日までの金額です。)
②基本手当支給残日数
基本手当支給残日数は「雇用保険受給資格者証」の裏に記載されています。
計算例を使って確認
再び、Aさんの例を確認して計算してみましょう。
例:Aさんの場合
離職時の年齢:32歳
離職前の給料:30万円(月給制)
再就職手当:受給
再就職手当の給付率:70%未満
支給残日数:60日
再就職日:4月1日
再就職先の給料:25万円(月給制)
Aさんの基本手当日額と基本手当支給残日数は、
基本手当日額 | 5,702円 |
---|---|
基本手当支給残日数 | 60日 |
そして、下記の計算式で上限金額を算出します。
基本手当日額×支給残日数 × 40%=上限金額
5,702円×60日×40%=136,848円
ここで出た金額と先ほど計算した金額を比べて、低い方の金額が支給額となります。
よって、Aさんの「就業促進定着手当」は上限金額の136,848円となります。
最初の計算式で計算すると約30万円と結構な金額になるので、上限額の約13万円を見ると、ちょっとがっかりしそうですが、この金額でももらえるだけありがたいですよね。
就業促進定着手当申請に必要な書類
- 就業促進定着手当支給申請書
- 雇用保険受給資格者証
- 就職日から6か月間の出勤簿(原本写し)
- 就職日から6か月間の給与明細もしくは賃金台帳(原本写し)
手続きは再就職手当の支給申請を行ったハローワーク窓口、もしくは郵送で申請することもできます。
「就業促進定着手当」の申請期間は、再就職した日から6ヶ月経過した日の翌日から2ヶ月間です。
いつもらえるの?
申請(書類提出)後、約2週間で指定の口座に振込まれます。(書類郵送⇒「就業促進定着手当決定通知書」が自宅に届くまで5日前後、それから7日前後で指定の口座に振込まれます。)
おわりに
今日は就業促進定着手当の計算方法について解説してみましたが、如何でしたか?
就業促進定着手当には「上限額」が設けられていることから、計算が複雑に思えますが、最初から「支給額」と「上限額」を別々に考えてみるとスムーズに計算できると思います。
それでは今日も最後までお読みいただきありがとうございました。