この記事では、退職金を確定申告する際の書き方と記入例をご紹介させていただきます。必要な書類(第一表・第二表・第三表)すべての記入例を作成しましたので、よかったら是非ご活用下さい。また提出時に必要な添付書類についてもご紹介しておりますので合わせてご参照下さい。
※記入例は、下記の設定にて作成しております。
【記入例の設定】
去年、定年退職し退職金をもらった。年の途中で退職したため年末調整を受けていないため、退職金も含めて確定申告を行い、納めすぎた所得税の還付を受ける。専業主婦の妻(56歳)が一人、子供は独立したので扶養親族はなし。現在は失業給付を受けながら再雇用先を探している。
※失業保険は非課税です。申告する必要はありません
(収入)
給与:退職前200万
退職金:2000万(勤続25年)
(控除)
配偶者控除:38万
社会保険料控除:50万
生命保険料控除:15万
地震保険料控除:5万
基礎控除:48万円
目次
事前に準備するもの
まずは確定申告書の作成前に、事前に用意するものを確認しておきましょう。今回のサンプル記入例で使うのは以下の資料となります。ご自身の状況に合わせて必要書類をご準備下さい。
- 確定申告書
- 申告書第三表
- 退職前の会社の源泉徴収票
- 退職所得の源泉徴収票
- 生命保険料控除証明書
- 地震保険料控除証明書
- 社会保険料控除証明書
- 国民健康保険の支払済み領収書
確定申告書・申告書第三表
退職金の確定申告は、確定申告書様式と申告書第三表を使用します。こちらからダウンロード出来ますのでご利用下さい。
↓ ↓ ↓
■確定申告書
■申告書第三表
各種の源泉徴収票
今回のサンプル記入例で使う源泉徴収票は次の2つです。
- 給与所得の源泉徴収票
- 退職所得の源泉徴収票
各種の控除証明書
生命保険料控除・地震保険料控除は加入している保険会社から毎年10・11月頃に送られてきます。国民年金を支払った場合の社会保険料控除証明書、退職後に国民健康保険に加入した場合は、国民健康保険を支払った領収書もご準備下さい。
確定申告書 第二表の書き方・記入例
第二表から記入していきますので、第二表をご用意下さい。
まずは源泉徴収票①②③、退職所得の源泉徴収票①②を下記第二表の該当部分に書き写してください。
【源泉徴収票】
【退職所得の源泉徴収票】
【第二表 記入例】
書き写したら、次に赤枠内を書いていきます。
赤① 住所と氏名・フリガナを記入します。
赤② 勤務先からの給与は、所得の種類に「給与」、種目に「給料」、 その右となりに勤務先の会社名を記入。退職金は、所得の種類に「退職」、種目は空欄でOK、その右となりに 勤務先の会社名を記入して下さい。
赤③ 源泉徴収された合計金額を記入します。青②と緑②を足した金額です。
赤④ 社会保険料(国民健康保険・介護保険など)として支払った金額と、その合計額を記入します。青③の源泉徴収票から書き写した金額の保険料等の種類には、「源泉徴収票」と記入してください。
赤⑤ 生命保険や医療保険などに加入している方は、保険会社から送られてきた「保険料控除証明書」を参照し、加入している保険料の欄に「支払った金額」を記入します。控除額ではなく「支払った金額」ですのでご注意下さい。
【参考記事】
■生命保険料控除の書き方と計算方法。年末調整と確定申告記入例付き
赤⑥ 地震保険に加入している方は、保険会社から送られてきた「保険料控除証明書」を参照し、加入している保険料の欄に「支払った金額」を記入します。控除額ではなく「支払った金額」ですのでご注意下さい。
【参考記事】
■地震保険料控除の書き方と計算方法。年末調整・確定申告の記入例付き
赤⑦ 配偶者や親族の情報(氏名・マイナンバー・続柄・生年月日)を記入します。
確定申告書 第一表の書き方・記入例
続いて第一表を記入していきます。
赤① 住所・氏名・フリガナ・マイナンバー・性別・世帯主の氏名・世帯主との続柄・生年月日・電話番号を記入します。※去年の1月1日時点の住所が現住所と異なる場合は、去年の1月1日時点も記入します。
生年月日の1つ目の枠(記入例で「3」と記載している部分)は次のとおり記入してください。
明治→1
大正→2
昭和→3
平成→4
赤② 「分離」に○をつけます。
赤③ 源泉徴収票から給与収入を記入します。源泉徴収票の青①の金額を書き写しましょう。
赤④ 赤③の給与収入を下記計算式に当てはめて給与所得を計算し、記入してください。
※「給与所得の自動計算ツール」を作成したので、計算が面倒な方はご利用ください。⇒給与所得の自動計算ツール
赤⑤ 所得金額の合計を記入します。今回のサンプルは給与所得だけなので赤④をそのまま記入します。他の所得がある人は合計額を記入してください。
赤⑥ 社会保険料控除額を記入します。第二表赤④の合計額を記入します。
赤⑦ 生命保険料控除額を計算して記入します。計算方法はこちらの記事に詳しく書かせていただいたので合わせてご参照ください。
■生命保険料控除の書き方と計算方法。年末調整と確定申告記入例付き
赤⑧ 地震保険料控除額を計算して記入します。計算方法はこちらの記事に詳しく書かせていただいたので合わせてご参照ください。
■地震保険料控除の書き方と計算方法。年末調整・確定申告の記入例付き
赤⑨ 配偶者控除額を記入するのですが、配偶者の年齢、または配偶者控除・配偶者特別控除どちらに該当するか?で控除額が違うのでこちらの記事にて控除額をご確認ください。
■配偶者(特別)控除の計算方法と書き方。年末調整と確定申告書記入例
赤⑩ 基礎控除額を記入します。基礎控除額は確定申告をする人の合計所得金額により異なり次の表のとおりです。ただ、合計所得金額が2,400万円以下であれば48万円なので、ほとんどの方は48万円になります。
合計所得金額 | 控除額 |
---|---|
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超~2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超~2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
扶養親族がいらっしゃる場合は、扶養親族の年齢により控除額が異なるので、こちらの記事で扶養親族の控除額をご確認ください。
■扶養控除:学生の子供や親の控除額は?年末調整・確定申告記入例付き!
赤⑪ ここまでの所得控除の合計金額を記入します。記入例の場合は⑥~⑩の合計金額を計算し記入します。
赤⑫ ⑪をそのまま転記します。
※当記事の記入例にはありませんが、雑損控除・医療費控除・寄付金控除に該当する方は、それぞれの控除額を計算し記入してください。
医療費控除・ふるさと納税についてはこちらの記事に詳しく書かせていただきましたので、該当する方は良かったらご参照下さい。
【参考記事】
■医療費控除:確定申告書の書き方と記入例(第一第二表・医療費の明細書)
■確定申告:ふるさと納税(寄付金控除)の書き方を記入例付で徹底解説
赤⑬ 第三表を提出するので、ここは記入しなくてOKです。
赤⑭⑮⑯⑰⑱ 第三表を作成後に記入するので、空けておいて下さい。
赤⑲ 第二表の赤③を書き写します。
赤⑳㉑ 第三表を作成後に記入するので、空けておいて下さい。
赤㉒ 配偶者の所得金額を記入します。配偶者が給与収入の場合は、下記計算式に当てはめて給与所得を計算してください。今回の記入例では、配偶者が専業主婦なので「0」と記入します。
※「給与所得の自動計算ツール」を作成したので、計算が面倒な方はご利用ください。⇒給与所得の自動計算ツール
赤㉓ 退職所得の源泉徴収票から源泉徴収税額②を書き写します。
赤㉔ 還付金の振込先口座を記入します。
申告書第三表(分離課税用)の書き方・記入例
次に申告書第三表(分離課税用)で退職所得の記入を行います。
赤① 住所・氏名・フリガナを記入します。
赤② 退職所得の源泉徴収票から支払金額①を書き写します。
赤③ 退職所得を算出し記入します。退職所得は上の「退職所得の源泉徴収票」の①支払金額から③退職所得控除額を引いた金額を2で割ることで算出します。※今年度の改正により、勤続5年以下の役員、社員の300万円超部分の退職金については、1/2することが出来なくなりました。
今回の記入例だと、①20,000,000円、③11,500,000円なので、
20,000,000-11,500,000=8,500,000
8,500,000÷2=4,250,000
となり、退職所得は 4,250,000 円です。
赤④ 第一表赤⑤を書き写します。
赤⑤ 第一表赤⑫を書き写します。
赤⑥ (赤④–赤⑤)の金額を記入します。今回の記入例では、赤④–赤⑤はマイナスになるので「0」となります。
赤⑦ (赤⑤–赤④)の金額を赤③から引いた金額を記入します。※1000円未満は切り捨て
今回の記入例だと、
⑤1,410,000-④1,320,000=90,000
③4,250,000-90,000=4,160,000
赤⑧ 赤⑥に対する税額を計算します。今回は、赤⑥が0なので「0」でOKです。
赤⑨ 赤⑦に対する所得税を計算します。 下記税額表の計算式に当てはめて、税額を算出しましょう。
(赤⑨サンプル計算例)
赤⑦は416万円なので、上記表の「330万円超~695万円以下」に該当。
4,160,000円×0.1(10%)-427,500円=404,500円
赤⑩ 赤⑧と赤⑨を足した金額を記入します。
赤⑪ 退職金の収入金額・退職所得控除額を記入します。退職金の源泉徴収票から①③を書き写してください。
確定申告書 第一表の書き方・記入例 パート2
先ほど空欄にしておいた第一表赤⑭⑮⑯⑰⑱⑳㉑を記入していきます。
赤⑭⑮⑯ 第三表赤⑩を書き写します。
赤⑰ 復興特別所得税額を計算し記入します。赤⑯に2.1%をかけた金額が復興特別所得税額です。
(サンプル例)
404,500円×0.021(2.1%)=8,494円(1円未満切捨て)
赤⑱ 赤⑯と赤⑰を足した金額を記入します。
赤⑳ 赤⑱から赤⑲を引いた金額を記入します。マイナスになる場合は、記入例のように頭に△を付けます。
赤㉑ 赤⑳のマイナスを取った金額を記入します。この金額が還付金額となります。
お疲れさまでした、これで確定申告の作成は完了です!最後に添付書類を確認しておきましょう。
添付書類の確認
【提出が必要な書類一覧】
- 確定申告書(第一表・第二表・第三表)
- 生命保険料控除証明書
- 地震保険料控除証明書
- 社会保険料控除証明書
- マイナンバー通知カードのコピー、またはマイナンバーカードのコピー
- 運転免許証などの本人確認書類のコピー
※マイナンバーカードのコピーを添付する場合は必要ありません。
源泉徴収票は提出しなくてOKです。
ここでご紹介しているのは、当記事の記入例設定で必要な添付書類となります。状況が異なる場合は、次章でご紹介する「税務署の電話相談センター」にて添付書類のご確認をお願いいたします。
おわりに
書き方がわからないときの対処法
人それぞれ状況が違うので、当記事の記入例だけではわからない部分も出てくるかと思います。その場合は、税務署の電話相談センターで聞くのが一番早いです。
確定申告の書き方でお困りの方は、ケース別に確定申告記入例をまとめた、こちらの記事も是非参考にしてみてください。
↓ ↓ ↓
■2024(令和5年分)確定申告書類の書き方・記入例ケース別徹底解説!
それでは今日も最後までお読みいただきありがとうございました。